洋上救急事業
海上の傷病者を救う世界唯⼀のシステム“海の救急医療”。
昭和60年の設⽴以来、出動は967件、救助⼈員は1,000名を数えます。
(令和5年3⽉31⽇現在)
最近の洋上救急の概要(動画)状況
下記より洋上救急の概要(動画)を見る事ができます。
洋上における医師の派遣は、人命救助と船員福祉という人道的観点にたって1985年10月より日本水難救済会の事業として開始されています。
洋上救急事業は、医師を洋上へ派遣して、救急医療を提供する世界で唯一のシステムです。
本動画は、洋上救急の概要をまとめた動画です。
なお、洋上救急の概要(英語版)もYouubeで聴取することができます。
船舶で傷病者が発生すると...
我が国の周辺海域においては、遥か洋上の船舶内で傷病者が発生し、緊急に医師の加療を必要とする場合、海上保安庁の巡視船・航空機等で医師・看護師をその船舶まで急送して応急治療を行いつつ、最寄りの病院に救急搬送しています。
慣熟訓練
洋上救急では、医師や看護師は巡視船やヘリコプターに乗組み、遥か洋上まで出動し、厳しい自然条件や巡視船・ヘリコプターの動揺、騒音等の悪条件下における救命治療が必要とされます。洋上救急では、医師や看護師は巡視船やヘリコプターに乗組み、遥か洋上まで出動し、厳しい自然条件や巡視船・ヘリコプターの動揺、騒音等の悪条件下における救命治療が必要とされます。このため、全国各地域では多数の医師・看護師が訓練に参加し、ヘリコプター等に搭乗して訓練を行うなど、現場の状況を実際に体験して出動に備えています。
ヘリコプター搭乗訓練
ヘリコプター機内での処置訓練
出動事例
令和5年8月21日 09:58発生
【発生位置】
北海道釧路沖東方約300海里付近海上
【船種等】
漁船(総トン数1,176トン 乗員48名)
【傷病者】
男性 29歳 機関長(フィリピン国籍)
【傷病名】
鼻骨解放骨折
【出動医療機関、医師等】
市立釧路総合病院(医師1名、看護師1名)
【出動勢力】
海上保安庁 巡視船えりも
【洋上救急活動状況】
令和5年8月21日午前9時58分頃、中華民国(台湾)漁船の日本総代理店から「釧路沖東方約 300海里の海上でフィリピン籍乗組員が作業中に顔面を負傷したので救助を求める」旨、海上保安庁に対し救助要請があった。
これを受け、同日午後1時10分頃、釧路海上保安部所属「巡視船えりも」に、市立釧路総合病院医師1名と看護師1名が乗船し現場向け釧路港を出港。
午後10時19分頃、該船と会合し、傷病者を船内に揚収し医師による措置を実施。
22日午前7時55分、釧路港に入港し待機していた救急隊へ傷病者を引き継いだ。
令和5年8月12日 11:16発生
【発生位置】
鹿児島県宇治島灯台から真方位271度約167kmの海上
【船種等】
旅客船(総トン数77,441トン 乗員695名)
【傷病者】
女性 80歳 乗客(日本国籍)
【傷病名】
脳出血(右頭頂葉皮質下出血)
【出動医療機関、医師等】
米盛病院(医師1名)
【出動勢力】
海上保安庁 ヘリコプターMH977、MH695
機動救難士2名
【洋上救急活動状況】
令和5年 8月12日午前11時16分、パナマ籍客船から本庁運用司令センターあて「80歳女性の乗客1名が出血性脳卒中の疑いがあるため、救助を願う。」旨の通報があった。
該船に患者の様態を確認したところ、船医による点滴等の処置を実施されている状態であり、緊急性が高く、洋上救急要請がなされたことから、同日午後3時9分、米盛病院へリポートにて鹿児島航空基地所属回転翼機MH977に同病院の医師1名が同乗し出発。
同日午後3時48分、宇治島の西方約167キロメートルの海上で該船と会合し、機動救難士が該船へ降下、患者1名をMH977に吊上げ救助。
同日午後5時4分頃、直接米盛病院へリポートへ搬送した。
令和5年8⽉5⽇ 5:00発⽣
【発⽣位置】
八丈島沖
【船種等】
測量船(総トン数3,998トン)
【傷病者】
男性 63歳 航海士(日本国籍)
【傷病名】
急性虫垂炎
【出動医療機関、医師等】
日本医科大学付属病院(医師1名)
【出動勢⼒】
海上保安庁 飛行機LAJ501 ヘリコプターMH691 巡視船あきつしま
特殊救難隊員3名
【洋上救急活動状況】
令和5年8月5日1030八丈島沖において、航海士が体の痛みを訴えたことから同症状について保土ヶ谷病院に医療助言を求めたところ、吐き気を伴わない場合は、心筋梗塞や胆管炎である可能性が高いことから早急に医療機関の受診が必要であるとの助言を受けたため、救助要請がなされた。
同日 日本医科大学附属病院医師に対し、洋上救急への同乗につき、承諾を得た。
本件については、羽田基地MH691にて光洋から患者を吊上げ救助し、八丈島空港へ搬送、八丈島空港にてLAJ501(日本医科大学付属病院医師2名同乗)に患者を乗せ換え、羽田基地へ搬送、東京消防庁救急車に引継ぎ、日本医科大学附属病院に搬送した。
令和5年7⽉3⽇ 05:40発⽣
【発⽣位置】
沖ノ鳥島沖
【船種等】
作業船(総トン数17,038トン)
【傷病者】
男性 61歳 司厨員(日本国籍)
【傷病名】
右背部痛
【出動医療機関、医師等】
日本医科大学付属病院(医師2名)
【出動勢⼒】
海上保安庁飛行機MA725
特殊救難隊員2名
作業用ヘリコプターAS332L
【洋上救急活動状況】
令和5年7月3日沖の鳥島沖において、作業員が右側腹痛を訴えたことから同症状について船医が診断したところところ、腎結石の疑いがあり、早急に医療機関への搬送の要ありとの判断がなされ、海上保安庁に救助要請がなされた。
3日 0835海上自衛隊に硫黄島飛行場使用申請を要請、同日同時刻受理同日 日本医科大学附属病院医師に対し、洋上救急への同乗につき、承諾を得た。
作業船に対しては、作業船ヘリコプターでの硫黄島飛行場への搬送を指示し、海上保安庁所属航空機MA725により患者を揚収、羽田基地にて救急隊に引継ぎ日本医科大学付属病院に搬送した。
令和5年6月28日 00:46発⽣
【発⽣位置】
千葉県犬吠埼東方約256海里付近海上
【船種等】
漁船(総トン数499トン 乗員32名)
【傷病者】
男性 64歳 漁労長(⽇本国籍)
【傷病名】
脳梗塞
【出動医療機関、医師等】
日本医科大学付属病院(医師1名)
【出動勢⼒】
海上保安庁巡視船かとり
海上自衛隊岩国基地救難飛行艇US-2 飛行機P1
【洋上救急活動状況】
令和5年6月28日午前0時46分頃、 千葉県犬吠埼東方約256海里付近海上で航行中の茨木県神栖市所属の漁船漁労長が下半身不随となったことから海上保安庁へ通報、同症状について横浜掖済会病院医師に医療助言を求めたところ、「早急な医療機関 への搬送の必要がある」旨指示を受けた。
このため海上保安庁は、海上自衛隊に対し、同日午前4時25分に災害派遣要請を打診し受理された。
医師等の派遣については、直ちに日本医科大学付属病院に対し医師派遣要請を実施、承諾を得た。
同日午前9時40分、海上自衛隊厚木基地にて岩国基地所属救難飛行艇US-2に医師1名が同乗のうえ厚木基地出発、午前10時35分該船と会合、収容作業開始し、午前11時45分該船からUS-2に傷病者を収容した後、医療行為を実施しながら、午後0時58分厚木基地到着、午後1時17分、傷病者をドクターカーに引継ぎ、日本医科大学付属病院へ搬送した。
US-2機内での医療処置の様子
令和5年6⽉17⽇ 17:30発⽣
【発⽣位置】
能代港から真方位度287度30海里付近海上
【船種等】
旅客船(総トン数14,214トン)
【傷病者】
男性 54歳 乗客(⽇本国籍)
【傷病名】
ラクナ梗塞
【出動医療機関、医師等】
秋田赤十字病院(医師1名、看護師1名)
【出動勢⼒】
海上保安庁 巡視船しんざん
航空自衛隊 秋田救難隊ヘリコプターUH60J、千歳救難隊飛行機U-125A
【洋上救急活動状況】
令和5年6月17日午後6時09分頃、秋田県能代港から真方位度287度30海里付近海上で航行中のフェリーから第二管区海上保安本部運用司令センターあて、一般電話により「航行中の船内において乗客の男性の呂律が回らなくなり、左半身も動かなくなっており、船員無線医療センターの医療助言で早急に病院に搬送する必要があるとの助言を得たので救助を要請する」旨連絡があった。
第二管区海上保安本部は、当庁航空機による救助を検討するも、天候不良のためフライトできず航空自衛隊航空救難団司令部に対し、6月17日午後8時41分に災害派遣要請を打診し受理された。
医師等の派遣については、同日午後8時46分、秋田赤十字病院に対し派遣要請を実施し、承諾を得た。
同日午後9時35分、秋田分屯基地(秋田)UH-60Jに医師1名、看護師1名が同乗のうえ秋田分屯基地出発、該船からUH-60Jに患者を収容した後、医療行為を実施しながら、同日午後11時37分、秋田分屯基地到着、救急車にて秋田赤十字病院へ搬送した。
令和5年5月27日 11:14発⽣
【発⽣位置】
鹿児島県南さつま市草垣島西南西約87海里付近海上
【船種等】
貨物船(総トン数44,500トン 乗員21名)
【傷病者】
男性 32歳 甲板手(中華人民共和国籍)
【傷病名】
脳震盪
【出動医療機関、医師等】
鹿児島市立病院(医師1名)
【出動勢⼒】
海上保安庁ヘリコプターMH695
機動救難士3名
【洋上救急活動状況】
令和5年5月27日午前11時14分頃、 鹿児島県南さつま市草垣島西南西約87海里付近の東シナ海海上で航行中のリベリア船籍の貨物船から「乗組員1名が意識混濁し会話ができない状態であるため、救助を求める」旨、海上保安庁へ通報があった。
同船舶代理店が症状について、医療機関に医療助言を求めたところ、「判断材料が少ないため医師を同行させて搬送するほうが良い」との指示を受けたことから、同27日午後0時20分、海上保安庁に対し洋上救急要請がなされた。
医師等の派遣について鹿児島市立病院に対し医師派遣要請を実施、承諾を得た。
同日午後3時25分、かごしまマリンポートヘリポートにて第十管区海上保安本部鹿児島航空基地所属ヘリコプターMH695に医師1名が同乗のうえ同ヘリポートを出発、午後4時12分草垣島の南方約8海里にて該船と会合、傷病者を収容した後、医療行為を実施しながら、午後5時43分、かごしまマリンポートヘリポート着、直ちに傷病者を鹿児島市南消防救急隊の救急車に引継ぎ、鹿児島市立病院へ搬送した。
令和5年5月4日 08:51発⽣
【発⽣位置】
沖縄本島南方約100海里付近海上
【船種等】
漁船(総トン数19トン 乗組員7名)
【傷病者】
男性 72歳 船員(日本国籍)
【傷病名】
脳梗塞、脳出血の疑い
【出動医療機関、医師等】
南部徳洲会病院(医師1名)
【出動勢⼒】
海上自衛隊岩国基地救難飛行艇US-2 那覇基地飛行機P-3C
【洋上救急活動状況】
令和5年5月4日午前8時51分頃、 沖縄本島南方約100海里付近海上で航行中の沖縄県那覇市所属の漁船から「船員が脳梗塞の初期症状があるため救助を求める」旨海上保安庁へ救助要請があった。
海上保安庁は、遠距離海域での救助要請であったことから、直ちに海上自衛隊に対し、災害派遣要請を行うとともに、医師等の派遣についても南部徳洲会病院に対し医師派遣要請を実施、承諾を得た。
同日午後2時37分、海上自衛隊岩国基地所属救難飛行艇US-2に医師1名が同乗のうえ那覇空港出発、午後5時43分該船と会合、収容作業開始し、午後5時56分該船からUS-2に傷病者を収容した。その後、医療行為を実施しながら、午後8時19分那覇空港着、午後8時34分、傷病者を那覇市消防局の救急車に引継ぎ、友愛医療センターへ搬送した。
US-2から救急車へ傷病者を移送する様子
令和5年4月27日 08:16発生
【発⽣位置】
沖縄本島南方約100海里付近海上
【船種等】
漁船(総トン数19トン 乗員9名)
【傷病者】
男性 24歳 甲板員(インドネシア国籍)
【傷病名】
大網ヘルニア
【出動医療機関、医師等】
日本医科⼤学付属病院(医師3名)
【出動勢力】
海上保安庁 ⾶⾏機LAJ500
特殊救難隊員2名
海上自衛隊硫黄島基地 ヘリコプターUH-60J
【洋上救急活動状況】
令和5年4月27日午前8時16分頃、 東京都南鳥島南西約430海里付近海上で航行中の高知県須崎市所属の漁船甲板員がみぞおちから膀胱にかけて激しい痛みを訴えたことから海上保安庁へ通報、同症状について宮城利府掖済会病院医師に医療助言を求めたところ、「早急な医療機関 への搬送の必要がある」旨指示を受けた。
このため海上保安庁は、海上自衛隊に対し、同日午後5時20分に災害派遣要請を打診し受理された。
医師等の派遣については、同日、日本医科大学付属病院医師に対し医師派遣要請を実施、承諾を得た。
翌28日午前11時25分、海上自衛隊硫黄島基地所属ヘリコプターUH-60Jが該船向け基地を出発、午後1時00分該船と会合、収容作業開始し、午後1時30分該船からUH-60Jに傷病者を収容した後、硫黄島基地へ帰投。
同日28日午後0時30分、第三管区海上保安本部羽田航空基地所属飛行機LAJ500に医師3名、特殊救難隊員2名が同乗のうえ同航空基地出発、午後3時15分、硫黄島にて傷病者を海上自衛隊より引継ぎ医療行為を実施しながら、午後6時00分羽田航空基地到着、午後6時05分、傷病者をドクターカーに引継ぎ、日本医科大学付属病院へ搬送した。
令和5年4月23日 14:30発⽣
【発⽣位置】
東京都南鳥島南南西約191海里付近海上
【船種等】
漁船(総トン数19トン 乗員9名)
【傷病者】
男性 40歳 甲板員(インドネシア国籍)
【傷病名】
尿管結石症
【出動医療機関、医師等】
東海⼤学医学部付属病院(医師2名、看護師1名)
【出動勢⼒】
海上⾃衛隊岩国基地 救難⾶⾏艇US-2 飛行機 P1
【洋上救急活動状況】
令和5年4月23日午後2時30分頃、 東京都南鳥島南南西方約191海里付近海上で航行中の高知県須崎市所属の漁船甲板員が左脇腹の痛みを訴えたことから海上保安庁へ通報、同症状について東京高輪病院医師に医療助言を求めたところ、「早急な医療機関への搬送の必要がある」旨指示を受けた。
このため海上保安庁は、海上自衛隊に対し、同日午後5時13分に災害派遣要請を打診し受理された。
医師等の派遣については、同日午後5時19分、東海大学医学部付属病院に対し医師派遣要請を実施、承諾を得た。
翌24日午前0時28分、海上自衛隊岩国基地所属救難飛行艇US-2に医師2名、看護師1名が同乗のうえ厚木基地出発、午前4時25分該船と会合、収容作業開始し、午前5時48分該船からUS-2に傷病者を収容した。
その後、南鳥島にて燃料補給、医療行為を実施しながら、午前11時58分厚木基地到着、午後0時11分、傷病者をドクターカーに引継ぎ、東海大学医学部付属病院へ搬送した。
令和5年3⽉29⽇ 1:15発⽣
【発⽣位置】
犬吠埼北東約75海里
【船種等】
漁船(総トン数14トン 乗組員8名)
【傷病者】
男性 23歳 甲板員(インドネシア国籍)
【傷病名】
胸痛
【出動医療機関、医師等】
日本医科⼤学付属病院(医師1名)
【出動勢⼒】
海上保安庁 ⾶⾏機MA725 ヘリコプターMH691
特殊救難隊員2名
【洋上救急活動状況】
令和5年3月29日(水)午前1時26分頃、犬吠埼東方約136㎞付近海上において、漁船から、「インドネシア人船員が急に胸の痛みを訴え倒れた。意識はあるが会話がうまくできない状態であるため救助願う。」との通報が横浜海上保安部にあった。日本医科大学付属病院の医師に助言を求めたところ「至急医療機関へ搬送する必要がある」との助言を受けたことから、船主からの要請で洋上救急が発動された。
同日午前4時30分、海上保安庁のヘリコプターが日本医科大学付属病院医師1名と特殊救難隊員2名を同乗のうえ羽田航空基地を出発、同日5時24分頃、犬吠埼東方約85km付近海上で患者を収容した。
同日午前7時00分頃、同ヘリコプターが羽田航空基地に到着し、東京消防庁救急隊に患者を引継ぎ、日本医科⼤学付属病院に搬送した。
令和5年3⽉2⽇ 3:36発⽣
【発⽣位置】
南鳥島東約505海里
【船種等】
一般貨物船(総トン数14,695トン 乗員15名)
【傷病者】
男性 36歳 機関長(ウクライナ国籍)
【傷病名】
消化管出血、急性腎不全
【出動医療機関、医師等】
東海大学医学部付属病院(医師2名、看護師1名)
【出動勢⼒】
海上保安庁 巡視船ざおう、飛行機 MAJ576、ヘリコプターMH920
海上自衛隊 輸送機 C-130R
【洋上救急活動状況】
令和5年3月2日0336 南鳥島の東約505海里において、機関長である患者が大量吐血、オランダコーストガードを介し当庁へ救助要請があった。その後、船保高輪病院に医療助言を受けさせた結果、何らかの病気に起因する消化管出血が疑われ、早急な医療機関への搬送が必要であるとの判断がなされたことから、該船に対し南鳥島への接近を指示、併せ巡視船ざおうを発動させ、南鳥島近海でざおう搭載MH機により患者を吊上げ、同島へ搬送、東海大学医学部付属病院 医師2名、看護師1名を同乗させた海上自衛隊輸送機C-130Rに患者を引継ぎ、厚木航空基地にて救急隊に引継ぎ、東海大学医学部付属病院へ搬送した。